diary

とある日のごはん日記

吉岡 淳平 / フィジカルパフォーマンスマネージャー

クラブハウス「BRAVE THUNDERS HALL」の食堂のとある日のご飯をご紹介。
体育館からクラブハウスは徒歩5分、練習後すぐに食事がとれる環境が整う。

朝食

寮に住む独身の選手は、午前の練習前に食堂で朝食をとる。ご飯とお味噌汁を中心とした和定食、卵料理にソーセージや魚などが並ぶ。卵・豆腐・納豆・チーズ・ヨーグルトは常備されているそう。サラダ&フルーツバーは、毎食あり、各々が量を調整して自由に取ることができる。

昼食

午前の練習後、既婚の選手も含めチームみんなが昼食をとる。昼食は午後のチーム練習に備え、なるべく消化のよいメニューが組まれている。

夕食

午後の練習後、チームみんなが夕食をとる。消費したエネルギーを補うメニュー構成だが、シーズン中かどうかや季節によって変動させていく。なんと、お茶・スポーツ飲料・野菜ジュースなどのドリンク類は食堂に常備。

 
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簡単なことを簡単にできる選手になってほしい

川崎ブレイブサンダース
フィジカルパフォーマンスマネージャー
吉岡 淳平さん

神奈川県川崎市に拠点をおく川崎ブレイブサンダースは、日本のプロバスケットボールリーグBリーグに所属するチーム。2016年のBリーグ発足以来3年連続で、上位8チームによる優勝決定トーナメント「B.LEAGUE CHAMPIONSHIP」出場を果たしている強豪チームだ。そんな川崎ブレイブサンダースは、1部・2部合わせて36チームあるBリーグの中でも、選手のコンディショニング環境が一番整っているチームと言われ、2018年4月から活動開始したユースチーム「U15川崎ブレイブサンダース」でも、食事を中心としたコンディショニングにおける知識向上に取り組んでいる。その環境や体制を構築し、マネジメントするのはフィジカルパフォーマンスマネージャーの吉岡淳平さん。吉岡さんにチームの取り組みについてお話を伺った。

コンディションを整える上で大事なのは食事

川崎ブレイブサンダースは、栄養士、ストレングスコーチ、アスレティックトレーナーなどコンディショニングにおける各専門分野のスタッフを配置し選手のサポート体制を構築している。チーム全体に目を配り、専門家集団を束ねているのが吉岡さんだ。
今期で9シーズン目に入るという吉岡さんだが、最初はトレーニングから身体のケア、栄養管理に至るまで、コンディショニングにおけるそのほとんどをトレーナーとして1人で担当していた。その頃チームは怪我をする選手が絶えず、良いトレーニングや練習を積んでいるはずなのに、体重や体組成※の数値に変化がみられない等、多くの課題を抱えていた。

吉岡さんはまず、選手たちの一日のスケジュールや食事、睡眠時間を細かくチェックした。その結果、ほとんどの選手が必要な栄養・食事量を摂れていないこと、またその必要量を自分で把握できていないことが分かった。

「食事は身体を作るもの。食事の管理を徹底し、食環境を整えることで、フィジカルを強くし、怪我をしない身体づくりにつながる」と、吉岡さんはチームが抱えていた課題の多くが食事で解決できると考えた。

同時に専門家の必要性も強く感じ、コンディショニング環境とスタッフの体制を整えるべきと所属企業に説明、まず初めに管理栄養士をチームに招き、現在のサポート体制につなげていった。

前職のラグビートップリーグのチーム「サントリー・サンゴリアス」でエディー・ジョーンズGM、清宮克幸監督など素晴らしいスタッフの下、トレーナーとして仕事をした経験から、食事とトレーニング、そして休養のバランスを整えることで日本人でも身体を大きくし、フィジカルを強くできると実感したという。実際、エディー・ジャパンとなってからのラグビー日本代表の選手の身体は見違えるように大きくなり、結果も出した。


※体組成とは、体を組織する脂肪・筋肉・水分などの成分。体組成計で体脂肪率や筋肉量、基礎代謝量などを計測する。

大切なのは管理することより、コミュニケーション

2年前に『ブレイブサンダースホール』というクラブハウス兼選手寮ができたことをきっかけに本格的な栄養管理ができるようになった。
床をバスケットコートに見立ててラインが引かれ、遊び心のある明るい食堂だ。ここで独身者は3食、既婚者も昼と夕は食堂で食事をとり、試合の日は軽食も出る。選手一人ひとりに必要なご飯の量が設定され、毎食自分でグラム数を測りご飯をよそって食べることができる。食事・トレーニング・ケアが一連の流れで行われる。食堂を見渡すと、視線が集まりやすい出入り口の壁に、「ニュース」と「マンスリーコラム」と呼ばれる栄養に関する情報が書かれたポスターが貼られている。

「コンディショニングについて、トレーニング・栄養・休養という項目で語られることがよくありますが、日々の積み重ねでその3つをバランスよく行うことが確実にパフォーマンスに影響します。例えば、気が付くと怪我をしにくくなったな、とか。選手たち自身も身体の変化を徐々に体感したようで、意識も変化しました」。

成果が一番出た選手は、身長190cm 体重78kg 体脂肪率10%の細身の身体を体脂肪率をほとんど増やすことなく、体重を10kg増やすことに成功した。彼は食の嗜好が偏っていたり、食べる量も全然足りていなかった。怪我も多く、試合に出られない日が続いていた。しかし、今では先発で活躍する中心選手として、チームに欠かせない存在に成長した。

「北ヘッドコーチから強く言われたのは、食事の時間が嫌になるような手法はやめてほしい、ということでした。食べることが選手の負担になるのではなく、楽しいと感じるように。だから、僕らが強制・管理しすぎないようにコミュニケーションをとることを大事にしています。選手たちとはもちろん、選手の奥様方と栄養士でLINEグループをつくってもらい、いつでも何でも相談できるようにしています。これが意外と機能していて、面白いですよ」。

身体の状態を把握してからトレーニングを行う習慣を

川崎ブレイブサンダースには小学4~6年生を対象とした「U12川崎ブレイブサンダース」と、中学1・2年生を対象とした「U15川崎ブレイブサンダース」の2つのユースチームがあり、週に1・2 回のペースで練習をしている。ヘッドコーチ、アシスタントコーチのほか、トレーナーや栄養士などトップチームのスタッフのアシスタントチームが中心となってコンディショニングサポートを行う。

「子どもたちは、体育館に入る前に体重を測ってコンディショニングチェックをしてからコートに入ります。どこか痛くないか、体調はどうか(5段階)、部活動でどれくらい練習して来たか、睡眠時間、練習前後の体重などを記入してもらいます。身体の状態を把握してからトレーニングを行う習慣をユースの頃から身につけることで、トップチームに行ってからもスムーズに習慣化できると思います」。

成長期の子どもたちは体重変化が大きく、意外と盲点となっているのが水分補給だ。一般的には、体重の2%以上の水分が失われると脱水症状になりパフォーマンスの低下につながると言われている。水分補給がうまくできないと翌日の疲労が抜けにくくなったり、体重減少につながったりする。トップチームでも入ったばかりの選手は同じ課題を抱えやすく、練習中コートの脇でコーチやスタッフがすぐに水分補給ができるようにスクイズボトルを持って立ち、こまめに呼びかける。

「試合中、こんな頻繁に水分補給できないよ」。

選手からそんな言葉がでるが、大事な試合でいい状態に持っていくために日々の積み重ねが必要だと口を酸っぱくする。子どもたちへは「スクイズボトルでいうと、一口でこれだけ押して飲んで」と、どのくらいの量を飲めばよいかボトルを押してレクチャーするんですよと、吉岡さんは少し楽しそうに話す。

身体も心も大きく変化するときにいい習慣を

ユースの子どもたちのコンディショニング環境を整えることを考えると、保護者が担う役割も大きくなる。そのため吉岡さんは、ニュースレターの配信など、保護者向けのサポートも増やしている。

「以前実施した『お弁当ワーク』は面白かったです。栄養士による栄養セミナーの後、用意したおかずをそれぞれ選んでお弁当に詰めていくワークをしたのですが、『この子は野菜を食べられないから。これが好きだから。』という感じで子どもの好みを優先して詰めていく。それを見て、苦手なものを入れて残してしまうより、好きなものをおいしく食べてほしいという思いが一番大きいことに気が付きました」。

何故、お弁当だったのか。ユースの練習は19時から始まり、食事をとるタイミングが難しい。お弁当を持参できると、練習前や練習後に送迎の車の中で、手軽に栄養補給することができるからだ。栄養セミナーとお弁当ワークをやったことで、子どもたちが嫌いなものでも「なぜ、食べた方が良いか」という栄養学的根拠がお母さんたちの知識となり、子どもに説明できるようになった。そのおかげで子どもたちも嫌いなものでも納得して食べるようになったという。これは吉岡さんも気づかされたところだと話す。

「最近、お母さん方の質問の内容が段々専門的になってきたと感じています。数字のことから始まり、カロリー計算や食い溜めはして良いのか、練習時間や環境によってうまく食事が取れない時はどうしたら良いかなど、僕ではうまく答えられないことも増えてきました」。

ユースでの取り組みはまだ1年も経っていないが、その成果は吉岡さんの実感として表れている。

「本当にベタですが、簡単なことを簡単に、そして簡単の幅を少しずつ多く大きくしていける選手になって欲しいと考えてずっとやっています」。

トップチームの選手たちは、シーズン中、毎週続く年間約60の試合を良い状態で臨めるよう、コンディションを整えていかなければいけない。厳しい試合展開になるほど、疲労度や集中力など、テクニックだけではない少しの差が勝敗に影響する。成長期にあり、身体も心も大きく変化するジュニアアスリートの時から、自分の身体や競技と向き合い、いい習慣を身につけながら成長していくことは、トップで長く活躍することにも繋がる。

「僕はコンディショニングにおける環境とサポート体制を整えたが、選手自身に意識がないと意味がない、だからこそ一緒に頑張っていきたい。」と吉岡さんは話してくれた。

PROFILE
吉岡 淳平

吉岡 淳平(Junpei Yoshioka)/ フィジカルパフォーマンスマネージャー

1977年生まれ。青山学院大学男子バスケットボール部、バスケットボールユニバーシアード男子日本代表チーム、日本航空女子バスケットボール部、サントリーラグビー部を経て、2009年から東芝バスケットボール部アスレチックトレーナー。現在は医療、栄養、フィジカルトレーニングにわたるコンディショニング全般を統括している。

1分間チャレンジ!

アスリートのための食事のポイント

食欲旺盛!食べ盛りの成長期アスリートの食事量は?

成長期アスリートは、身体が大きくなるだけでなく、食欲も増えます。「食べ過ぎてはいないか」と心配になると思います。体重、体脂肪量が大きく増えていなければ、食事量は合っていると考えられます。しかし、「質」も大切ですので、肉や菓子パンばかり食べる、野菜や果物をあまり食べないなど偏った食事では、疲労回復が遅れることがあります。「量」だけでなく、「質」にもこだわりたいです。

成長期のジュニアアスリートの食事のポイント

1. 基本の食事の形を覚える

1. 基本の食事の形を覚える

基本の食事の形は、主食(ごはん、パンなど)、主菜(メインのおかず)、副菜(野菜、きのこ、海そうのおかず)、果物、乳製品です。この形を覚えておけば、外食、コンビニエンスストア、遠征など、どこに行っても揃えられます。例えば、主食+主菜のメニューはカレーや丼、主食+副菜のメニューはタンメン、中華丼があります。成長期アスリートの1日必要なエネルギー量を確認しましょう。

2. 1食あたりのごはん量の目安

2. 1食あたりのごはん量の目安

1日の推定必要エネルギー量と1食あたりのごはんの量の目安

●2000~3000kcal:普通お茶碗1~2杯
●3000~4000kcal :普通お茶碗2杯~4杯
●4000kcal~   :普通お茶碗3杯~

目安ですので、お代わりしても結構です。しかし、体重が増えすぎる場合は、食べ過ぎに注意が必要です。

3. 定期的に体重や体脂肪率を測定しよう

定期的に体重を量り、体重が大きく増えすぎていないか確認しましょう。高校生以上は体脂肪率も測定し、体重だけでなく、体脂肪量、除脂肪量の増減を確認しましょう。

体重(kg)×体脂肪率(%)÷100=体脂肪量(kg)
体重(kg)-体脂肪量(kg)=除脂肪量(kg)
除脂肪量は、体重から体脂肪を除いた筋肉や骨、内臓、体水分などの総量

体重、体脂肪率を測定する時は、測定条件を揃えましょう。例えば、起床後、練習前、入浴前など。

この食事のポイントを教えてくれた専門家
prof

上村 香久子さん管理栄養士・調理師

給食会社、病院勤務、スポーツ選手サポート関連会社、スポーツ庁委託事業スタッフを経て、2017年からフリーランスとして、柔道全日本強化選手や、中高生の野球、ラグビー、サッカー、バレーボールなどのチームのサポートを行う。